プロキシマ・ケンタウリはどのようにして強力なフレアを起こすのか?
プロキシマ・ケンタウリの質量は太陽の約12%、半径は約14%しかない。しかし、小さな恒星がいつも穏やかだとは限らない。プロキシマの内部では、熱いガスが上昇し、冷えたガスが下降する動きがほぼ全域で続いている。この動きと自転が強い磁場を生み、磁場に蓄えられたエネルギーが突然放出されると、紫外線・X線・電波が急増するフレアが発生する。
プロキシマは太陽から約4.24光年離れた、太陽の次に私たちに近い恒星だ。アルファ・ケンタウリA・Bと重力で結ばれているが、太陽に似たA・Bとは異なり、はるかに小さく暗い赤色矮星である。恒星全体の光から求めた表面温度は約2,900K、摂氏では約2,600度だ。可視光よりも、目に見えない赤外線として多くのエネルギーを放っている。
- 約4.24光年 太陽からプロキシマ・ケンタウリまでの距離
- 太陽の約12% 観測データと恒星モデルから求めた質量
- 太陽の約14% 観測データと恒星モデルから求めた半径
- 約2,900K 摂氏で約2,600度の表面温度
プロキシマ・ケンタウリは太陽と何が違うのか?
太陽では、中心で生まれたエネルギーが外へ運ばれる仕組みが内部の領域によって異なる。プロキシマのように質量が非常に小さい恒星では、熱いガスが上昇し、冷えたガスが下降する対流が内部の大部分で起きると考えられている。この動きによって水素は恒星の中で広く混ざる。そのため、まず中心部の水素を使う太陽とは、年を重ねたときの変化の仕方も異なる。
質量が小さいと中心温度が低く、水素をエネルギーに変える核融合も遅い。プロキシマは太陽よりはるかに暗いが、燃料をゆっくり使うため、理論上は太陽よりずっと長く水素核融合を続けられる。宇宙の年齢は約138億年で、その予測寿命より短い。このため、このような赤色矮星が最後にどうなるかはまだ直接観測されておらず、恒星進化モデルによってのみ予測されている。
プロキシマの自転周期は約90日で、太陽の約25日より長い。それでも磁気活動は活発だ。恒星内部の熱いガスには電荷を帯びた粒子が含まれ、このガスの動きと自転が一緒に磁場を生み出す。表面の黒点や明るい領域も、恒星の自転に伴って明るさや星の光の色をわずかに変える。
フレアはどれほど速く明るくなり、消えていくのか?
研究チームは2019年、約40時間にわたってプロキシマを紫外線・可視光・電波など複数の波長で同時観測した。その間に起きた最も強いフレアでは、紫外線の明るさが短時間だけ通常の約1万4,000倍に達した。これは一度の短い爆発のピーク値であり、恒星の平均的な明るさではない。
同じフレアでも、観測する光の種類によって明るくなる時刻と度合いが異なる。紫外線とX線は恒星外層の高温ガスを、電波は高速で動く電子と磁場の状態を教えてくれる。一種類の光だけでは爆発が放出したエネルギーと粒子の動きをすべて把握できないため、複数の光を同時に観測する。
プロキシマ・ケンタウリは小さく普段は暗いが、磁場に蓄えられたエネルギーが一気に放出されると強力なフレアを起こす。
フレアは周囲の惑星の大気にどのような影響を与えるのか?
プロキシマbとdは恒星のすぐ近くを公転する。そのため、同じ強さのフレアでも、地球が太陽から受けるよりはるかに強い紫外線やX線にさらされる可能性がある。高エネルギーの光は大気分子を分解し、どの気体がどれほど存在するかを変える。長い時間がたてば、大気の一部が宇宙へ逃げる原因にもなりうる。
しかし、強いフレアがあるからといって、大気や生命がないとすぐに結論づけることはできない。フレアの頻度、飛来する粒子の量、もとの大気の厚さと組成によって結果は変わる。惑星の磁場や、内部から新たな気体が供給される現象も影響しうる。プロキシマの惑星では大気がまだ直接検出されていないため、現在の研究ではさまざまな条件を仮定して大気がどう変化するかを比較している。
約1万4,000倍という値は、2019年に紫外線で測定された短時間の最大光度を示す。可視光を含むすべての波長で同じ割合だけ明るくなったことや、その状態が長く続いたことを意味しない。
恒星の活動と惑星の信号をどう見分けるのか?
惑星の重力はプロキシマをわずかに前後へ動かす。恒星が地球に近づくときと遠ざかるときには、星の光にごく小さな違いが現れる。しかし、黒点や明るい領域も恒星の自転に伴って似た違いを作る。フレア中に記録した星の光を、平常時のデータとまったく同じように扱うこともできない。
研究者は、複数の種類の光から測った恒星の速度、明るさの変化、磁気活動をまとめて比較する。惑星が原因なら、同じ周期が長期間にわたって安定して繰り返されるはずだ。黒点やフレアが強くなると同時に変化する信号は恒星由来とみなし、分けて計算する。プロキシマbとdを確認するために、異なる装置で長期間観測したのはこのためだ。
- 平常時の星の光を測る 恒星の温度と組成、自転、基準となる磁気活動を記録する。
- 複数の種類の光を同時に見る 一つのフレアが紫外線・可視光・電波でどう異なるかを追う。
- 自転による変化を見つける 黒点や明るい領域が約90日ごとに繰り返すか確認する。
- 惑星の周期を分けて探す 恒星活動とは異なる11.2日と5.12日の周期が、複数の装置で繰り返すか確かめる。
望遠鏡でプロキシマの表面を見ることはできるのか?
Hubbleが撮影したプロキシマ・ケンタウリも、丸い恒星表面ではなく、明るい点と光の筋として写る。実際の円盤は小さすぎるため、黒点やフレアが起きた位置を写真に収めることはできない。質量・半径・温度・自転は、距離や明るさ、星の光の色の測定結果と恒星モデルを組み合わせて求める。
「赤色矮星」という名前も、人が鮮やかな赤い表面を見たという意味ではない。温度が低く、太陽より波長の長い光を多く放つ恒星を指す分類名だ。このページの恒星の絵は測定値をもとにした視覚資料であり、実際の表面写真ではない。
近くの恒星を観測すると、さらに何が分かるのか?
4.24光年は現在の宇宙船で短時間に行ける距離ではないが、プロキシマは遠い恒星より明るく見え、繰り返し測定するのに適している。小さなフレアの頻度、自転と磁気活動の長期的な変化、惑星が恒星をどれほど揺らすかを継続して調べられる。こうして集めたデータは、小さな赤色矮星の活動が惑星探しをどう妨げ、周囲の惑星の大気にどのような影響を与えうるかを明らかにするために使われる。
出典
- NASA Science — Proxima Centauri
- NASA — Alpha Centauri: A Triple Star System
- ESA — Proxima Centauri, Our Nearest Neighbour
- NASA Science — Neighboring Star’s Bad Behavior
- NASA Science — Puny Stars Pack a Big Punch
- Astronomy & Astrophysics — Proxima Centauri Stellar Parameters
- Astronomy & Astrophysics — Proxima Centauri with NIRPS