ケプラー90 iはどんな検証を経て惑星と認められたのか?
研究チームは、すでに惑星が知られている670個の恒星についてKeplerのデータを調べ直し、新たなトランジット信号を探した。基本条件を満たした513個の信号に対し、ニューラルネットはiの信号に0.942というスコアを付け、優先して調べる候補に選んだ。その後、信号がどの恒星から来たのか、装置の誤差ではないか、互いを回る2つの恒星が惑星に似た信号を作った可能性はないかを別々に検査した。惑星と誤認する確率はまず0.5%と計算され、すでに7個の惑星が知られる恒星だという条件を加えると0.01%未満まで下がった。こうしてiは統計的に惑星と確認された。
- 670個 新しいトランジット信号を求めて再調査した恒星の数
- 513個 基本条件を満たし、ニューラルネットが調査順を付けた信号の数
- 0.942 ニューラルネットがi候補に付けたスコア
- 0.01%未満 全条件を反映した後にiを惑星と誤認する確率
670個の恒星から513個の候補信号を見つけた過程
Keplerが4年間記録した星の光には、既知の7惑星のトランジットだけでなく、装置の雑音や恒星自身の明るさの変化も含まれていた。研究チームは既知のトランジットを先に取り除き、明るさが一定の間隔で下がるパターンを探す別の検索処理を670個の複数惑星系に適用した。完全なトランジットが3回に満たない信号や、物理的に短すぎる信号などを除いても、513個の「調査対象の信号」が残った。
この段階で残った信号がすべて惑星だったわけではない。宇宙機の小さな誤差、恒星自身の変化、互いを回る2つの恒星の食も、よく似た繰り返し信号を作る。ニューラルネットは513個の中から惑星のトランジットに形が似たものを先に人が調べられるよう、順番を付けた。0.5を超えた信号は30個、0.8を超えた信号は9個で、14.449日ごとに繰り返すKepler-90の信号は0.942だった。
人工知能は513個の信号を調べる順番を決めた。惑星かどうかは、信号の位置、装置の誤差、連星の可能性を研究者が別に調べて判断した。
0.942というスコアが惑星である確率ではないのはなぜか?
ニューラルネットは、人がすでに惑星信号または誤検出と判定した約1万5千個のKeplerデータで学習した。1公転分の明るさの変化と、トランジット部分を拡大した形の両方を入力として受け取った。学習に使わなかった1,523個の試験信号では、約96%を正しく分類した。また、惑星信号を誤検出より上に並べる能力を表すAUCは0.988だった。
AUC 0.988とは、試験データから惑星信号と誤検出を1つずつ選んだとき、98.8%の割合で惑星信号に高いスコアを付けたという意味である。Kepler-90 i自体が98.8%の確率で惑星だという意味ではない。iの0.942も同じニューラルネット内で候補の調査順を決める値であり、考えられるすべての誤りを含めた最終的な惑星確率ではない。
ニューラルネットに渡したデータには、画像のどの画素から信号が来たかを示す位置情報がなかった。また、背景にある別の恒星のトランジットや、一部の連星信号に高いスコアを付ける弱点もあった。そのため、高いスコアを得た後にも別の検証が必要だった。
信号は別の恒星や観測装置から生じたものではないのか?
研究チームはまず、14.449日ごとに繰り返す明るさの低下を直接確認した。遮られる星の光の量が観測時期によって変わるか、信号が装置の別の変化と同じ時刻に繰り返すかを調べた。さらに、トランジット中にどの画素が暗くなるかも確認した。位置がずれるなら、信号はKepler-90ではなく、近くで重なって見える別の恒星から来た可能性がある。
地上望遠鏡の高解像度画像を使い、Keplerには1点に見えた範囲に明るい伴星が隠れていないかも調べた。主な減光の間に、より浅い2回目の減光がないかを探し、連星である可能性も絞り込んだ。装置の変化を別々の方法で補正しても信号が残ったため、この繰り返しは宇宙機の誤差ではなく実際の天体から来た現象だと判断した。
- 検索 既知の惑星信号を除いた670個の恒星から、繰り返す減光を探して513個を残す。
- 調査順の決定 ニューラルネットが全公転分とトランジット部分の形を見て、i候補に0.942を付ける。
- 追加検査 画素の位置、装置の誤差、2回目の減光、高解像度画像を確認する。
- 統計的検証 連星による説明と複数惑星系という条件を計算し、誤検出確率を0.01%未満に下げる。
- 惑星の性質 確認済みのトランジットから14.449日の公転周期と地球の1.32倍の半径を求めるが、質量と内部組成はわからない。
誤検出率が0.5%から0.01%未満に下がった理由
研究チームはvespaという検証ツールで、Kepler-90 iのトランジットの形を、実際の惑星が作る場合、Kepler-90の周りを2つの恒星が回る場合、背景にある2つの恒星が回る場合と比較した。恒星の性質、高解像度画像で見つからなかった伴星の明るさの範囲、2回目の減光が検出されなかった程度も計算に入れた。その結果、惑星ではない天体が信号を作った確率は約0.005、つまり0.5%だった。これはKepler惑星の統計的検証でよく使われる1%の基準より低い。
さらに、すでに7個の惑星が同じ恒星の前を通るという情報を加えた。1つの恒星から惑星に似た信号が複数見つかっていれば、新たな信号1つが偶然の誤検出である可能性は、単独で見つかった信号より低い。この「複数性」の条件を反映すると、誤検出確率は0.0001、つまり0.01%未満に下がり、iは惑星と確認された。ただし、惑星の重力から質量を測ったわけでも、別の望遠鏡が独立したトランジットを確認したわけでもない。既知の別原因がこの信号を作った確率を十分に下げ、統計的に惑星と認めたのである。
トランジット信号だけでどこまで分かるのか?
iのトランジットは14.44912±0.00020日ごとに繰り返し、約2.80±0.31時間続く。遮られた星の光の量と中心星の半径から、iの半径は地球の1.32±0.21倍と計算された。他の惑星と同じ平面の円軌道ならトランジットは約5時間続くと予想されるが、実際はもっと短かった。研究チームは、iの軌道が他の7惑星より少し傾き、恒星の端に近いところを通る可能性を示した。
小さな半径は岩石の多い惑星である可能性を高めるが、質量、平均密度、大気の有無を測ったわけではない。現在NASAの一般向け惑星カードには約2.3地球質量と表示されるが、発見論文は質量を測っておらず、Exoplanet Archiveの標準研究行でも質量欄は空白である。したがって2.3を独立した重力測定値として扱い、組成を決めることはできない。
発見研究にある709±75K、摂氏約436±75度という温度も計算値である。熱が惑星全体に均等に広がり、星の光の0~70%を反射すると仮定している。表面や大気の実測温度ではなく、雲も観測されていない。iは8番目に発見されたため最後の文字を受けたが、恒星からの順番ではbとcに次ぐ3番目である。
このページの色と表面は観測写真ではなく、理解のためのイラストである。Keplerはiの丸い円盤を分離して撮影できなかった。実際に確認されたのは、繰り返すトランジットの時刻と長さ、遮られた星の光の量、そして誤検出分析の結果である。
AIが確認の順番を決め、研究者が惑星かどうかを確かめた
Kepler-90 iのトランジット信号は2017年に新しく観測されたものではなく、既存のKeplerデータにすでに含まれていた。新しかったのは、弱い繰り返し信号を探し直す検索方法、513個の候補に調査順を付けるニューラルネット、信号の位置と連星・装置の誤差を調べる検証手順だった。どれか1つの段階だけでiを惑星と判断したわけではない。
この例で人工知能は天文学者の代わりに結論を出していない。人がすべてを同じ詳しさで調べられない大規模データの中で、先に見るべき信号の順番を決めた。同じ結果を再確認するには、どの検索方法で候補を見つけたか、ニューラルネットのスコアが何を意味するか、最終判断にどの別情報を使ったかを一緒に記録する必要がある。
出典
- The Astronomical Journal — Deep-Learning Search and Statistical Validation of Kepler-90 i
- NASA — Artificial Intelligence and the Eighth Kepler-90 Planet
- NASA Exoplanet Archive — Kepler-90 i Published Parameters
- NASA Exoplanet Archive — Planet Parameter and Mass-Provenance Definitions
- The Astrophysical Journal — Vespa False-Positive Probabilities and Statistical Validation
- Publications of the Astronomical Society of the Pacific — Kepler Data-Validation Tests
- NASA Science — Kepler Mission and Transit Data